キラー・コワルスキーは良い人だったらしい。
あいつは畳では死ねない…というフレーズがある。
大体において、人でなし、人殺し、乱暴者などに対して、使われる。日本で言えば、人斬り半次郎、以蔵、晋助などの幕末のテロリストなどは、その口だろう。(実際、凄く惨たらしい死に方をしている)
子供の頃、キラー・コワルスキーをテレビで観て、この男こそ、「畳では、とても死ねない」奴だと確信した。キラーコワルスキーは、ホントに怖いレスラーだった。2メートル以上の身長なのに、菜食主義者で、痩せていて、青白くて、目つきがやばくて、動きが速くて、とんでもなく強かった。
プロレスファンなら誰もが知っている、例の耳そぎ事件(1959年、トップロープからのニードロップでユーコン・エリックの左耳をそぎ落とした。その後、エリックはショックで自殺した…と)。
実際のところ、ユーコンが死んだのは、妻の不貞に苦しんだせいらしいが、幼い俺は、当然知る由もない。(耳をそいだのは事実)
そのショックでコワルスキーは、肉が食べられなくなり、菜食主義者になったとか、その後は、死神のように、病院送りにしたレスラーは数知れず…等、冷酷無比な殺人鬼ということを、信じきっていたのだ。(病院送りにしたレスラーは数知れずは事実)
この手の話は、ご存知のとおり、殆ど梶原一騎先生の創作らしい。ホント、勘弁して欲しい。梶原ワールドを事実と信じ込んでいた小学生の俺は、奴がコーナーポストの上から、フライングニードロップを狙うシーンでは、正視できないくらい怯えてしまうのだった。
一昨日、コワルスキー氏は、82歳の生涯を安らかに終えた。引退後は、レスリングスクールを開き後進の指導をしていた。とても優しく、周囲に細やかな気配りのできる人だったらしい。
コワルスキーは、対戦相手の耳をそぐは、病院送りにするは、リング上では、やりたい放題だったけど、案外いい人だったんだ、だから畳で(カナダ人だからベットで…か)死ねたんだ、ふ~ん、ふ~んと、少し拍子抜けした気分。何か、ちょっと残念だ。ヒールならヒールらしく、もうちょっと凄みのある最期が相応しいのではないか(FEぺディアによると、レスラー生活晩年は、髪が薄くなってカツラを使用していたため、ヘッドロックは御法度だったらしい。殺人鬼にしては、何とお茶目過ぎるエピソードだ)
ふ~ん、そういうわけか。

