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偶然耳に入った話  このエントリーをはてなブックマークに追加 このエントリー参照しているはてなブックマーク このエントリーをdel.icio.usに追加

毎日の暮らしは、単調で、平板になりがちだ。 穏やかに、平穏に、時が過ぎていく。そんな平凡な日常でも、時にはハードボイルドな世界を垣間見ることがある。

鎌倉駅前に、小さな公園がある。電車を待つ間、煙草を吸っていたら、大きな声で喋っている男性が近づいてきた。

歳のころは、30歳位、背広姿、185センチ、90KGくらいの大男で、風貌は気のいいアンちゃんという感じだ。携帯で誰かと話をしているのが、聞くとはなしに耳に入ってくる...。

「お前は、ビジネスマン失格だ。最初の15分間プレイしたか?ガチでプレイしたのか?」

「お前は、騙されている。い~や、お前は騙されている。絶対騙されている。騙されてんだよ。」

「プレイをしたのか? プレイを」

後輩に、何か説教をしているようだ。やたら「プレイ」を連発している。恐らく客先訪問した際、最初の15分で何か行うのが、彼の会社の流儀なのだろう。「プレイ」の内容が何なのか?物凄く気になる。「プレイ」と言うからには、何かとっておきの、あっと驚くパフォーマンスであるに違いない。

俺の気持ちを知ってか知らずか(勿論知らない)、「プレイ」の話しは、突如終わり、次のトピックへいきなり移る。

「沖縄の、ミカワのところ、摘発されてさあ。今じゃあ、残りはタイ人だけらしいぜ。大笑いだよな」

摘発? タイ人? ミカワって誰?どんだけ、ヤバイ仕事をしている人達なのだろう。

「だからさ、最初の15分でさ、プレイしなきゃ駄目だろ。お前はさ、まじ丸め込まれてんだよ。 人を信じちゃ駄目なんだよ、俺達の世界はさあ。ビシッとプレイしなきゃあ、騙されるんだよぅ」

おいおい、摘発の顛末や、タイ人との関係は? ミカワ氏はどうなったのよ? 会話は「プレイ」で始まり「プレイ」で終わった。でも、内容がさっぱりわからないのだ。

俺の頭の中は、馳周星的なディープストーリーが渦巻いているのに、これでは、全然わからんじゃないか。 こんな気持ちのままで、誰と暮らせというの、指と指の隙間、そしていつか埋めたい。

「じゃあご苦労さん、今晩飲みに行こうぜ」そう言って、携帯を切ると、彼は、大股で、由比ガ浜方面へと立ち去っていたのだった。決して俺を振り返ることもなく。まあ、元々、見ず知らずだし。

ハードボイルドな男の世界でも(良く内容は判らないのだが)、最後は、「ご苦労さん」の一言&ノミニケーション…ということみたいだ。 妙に予定調和な終わり方に、ちょっとたじろぐ俺だった。

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