占い
正月には毎年、占い師にみてもらうことにしている。
といっても、コンピューター占いで、手相と生年月日を打ち込むと占い結果がでてきて、その結果について1~2分占い師が、極めて大雑把なコメントをするという類の安くて、簡易なものだ。
別段信じているわけでもなく、どちらかというと、「貴方の前世は、フィレンチェで、宮廷画家をしていて、今青いオーラがでています」などと言われても、一体何を根拠に?と冷静に切り返す性質だ。
これまで、まるで嵐に翻弄される小舟のように、雨に打たれる野菊のように、両足をチョコンと揃えて座る猫ちゃんのように、運命に弄ばれてきた俺は、この馬鹿馬鹿しくも、不条理で、統御・予測不可能な人生にある種の諦念を覚えつつある。
そんな人生に「かりそめのスイング」「御籤と占いで弾丸ファイター」が基本スタンスだ。
2008年度は、ゼロ学占星術、六星占術では、最悪の年にあたる。所謂、天中殺、大殺界という奴だ。どんな酷いことを言われるのだろうと、正月早々ちょっぴり憂鬱に順番を待つ。
紺のネクタイ、白いワイシャツ、胡麻塩頭で、ガタイの良い占い師のジジイは、眼鏡を鼻の上にずらして、コンピューター占いの結果と、俺の手相、顔をかわるがわる見た後「あんた、自営業だよね」
自営ではないが、小さな会社の社長をしている旨、モゴモゴと答える。
「あんたは今年大殺界やで」爺さんは、耳が遠いのか、かなり声が大きい。後ろに並んでいるOL風の娘が、ハッと息をのむ気配を感じる。
ジジイ、そんな事はわかっとるわ、さあ言え、今年起こるであろう、悲惨かつ不条理な出来事の数々を、さあ言ってみろ、俺は充分覚悟はできているんだ…と心の中で呟く。
爺さん、馬鹿でっかい声で、「運気はあがってきとる。今年から最高や。手相に、ば~んとよくでとるわ」
おい、ジジイ、大殺界でゼロ地点にいるのに,何故、運勢が最高なんだ…。思いっきり、疑惑の眼差しを向ける俺に、爺さんは、たじろぎもせず、こう言うのだった。
「あんたは、自分の努力だけで、這い上がるしか方法がないタイプじゃ。アッハッハッハ」
爺、全然おかしくないぞ。
「ここまで、苦労して、努力しているのは、手相にでておる。これまでの努力が実を結び始める時期が来た…っちゅうわけやね」
俺は、あの灼熱のザイールでハンマーを振り下ろした日々、極寒のシベリアで丸太を運んだこと、親父の投げるピンポン球を鼻先でかわす辛い練習など…ここ数年間の苦闘の記憶が甦り、熱いものがこみ上げてくるのを感じた。その時、
「どっちにしてもやな、あんたは、自分を信じて、思いっきり努力を続けるしかない。天中殺やら何やらは、あんたには、元々何も関係がないっちゅうこっちゃ」
はぁ~っ、「元々何も関係がないっちゅうこっちゃ」...って、何が?ジジイの言っていることを冷静に翻訳すれば…
1)努力をすれば、願いはかなう
2)つまり、努力が足らなければ、願いはかなわんのじゃ
3)元々天中殺なんか無関係→お前の運勢なんか俺にわかるかアホ
4)占いする暇があったら、仕事せえ、ボケが
今年、もし成功しない場合、「あんた、努力を怠ったようやね。手相にバ~ンとでておる!!」とこの爺さんは、涼しい顔で言うに違いない。
「因みに、あんたは太閤さんと同じ手相や。今年は、天下取りの年じゃ。ガッハッハッハ」
まだ言うか、くそジジイ、金返せ…俺は、心の中で激しく毒づきながら、その場を離れた。
この爺さんが、とんでもない食わせ物であることは疑う余地がない。
ただ、「自分を信じて、思いっきり努力を続けるしかない」というのは、真理だ。「これまでの努力が実を結び始める時期」が到来しつつあるのは、体が感じ始めている。ついでに言えば、「運勢」云々など、元々俺の人生とは、余り関係が無い。努力が充分であれば成功するし、足らなければ失敗するだけなのだ。
そういう訳で、何の根拠も無い思いつきをアドリブで言っている割には、いいところは突いている...ともいえる。
う~む。ジイサンもしかすると、タダモノではない?
足早に立ち去る俺の背後で、爺さんのやたらデカイ声が響いている。
「お嬢ちゃん、長女やね。そうそう、次女。末っ子やね。あらあら弟がいる…。そりゃ腹違いかもわからんなあ。今年は、最高や。三国一の花嫁になるわ…。何、もう結婚してはる?」
まあ、たまたま俺の場合のみ、いい所を突いていた...だけなのかもしれないね


コメント
anrwus wrzqygj ezspjiuhk wabudn holgw qlrfhbc rbdfwke
投稿者: noakmty butwzgk | 2008年02月04日 11:48