時太山急死事件について
長い間信じていたことが、実は間違っていた...そのショックはいかばかりか?
閉鎖的かつ歴史を持った集団においては、その集団だけの因習、ルールみたいなものが蔓延る傾向が強く、その成員の行動を大きく歪めることもある。
幼い時、食卓に、イカの刺身が並ぶと、うちの母親は、必ず、「イカばかりか」と声をかけ、まだ口の良く回らない俺に、「タコばかり、吸い付くばかりでございまちゅ」と言わせて喜んでいた。
第二子の宿命なのか、うちだけに当てはまる特殊な要因なのかは不明だが、うちの母親は、第一子の教育で飽きてしまっていて、第二子はテキト~に育てるという確固たる方針をもっていたようだ。上述例は、子供をおもちゃにして喜んでいる例。 いかにも、教育的配慮のかけた、ユルイ雰囲気が伝わるでしょ。まあ、子供は、潜在的に、生きる力を持っているので、実際のところ、テキトーに育てる位が丁度良いのではあるが...。
悲劇的なのは、この「イカばかりか、タコばかり、吸い付くばかりで御座います」というこのフレーズを、俺は、かなり長い間一般慣用句であると信じていて、少なくとも、イカの料理が食卓に並ぶ時は、どの家庭でも、「イカばかりか、タコばかり、吸い付くばかりで御座います」と言っていると思っていたのである。
後年、これは、俺の母親のオリジナルフレーズであり、全国的に、こういう慣用句はない...という事実を突きつけられ、愕然としたのだった。
長い間信じていたことが、実は間違っていた...そのショックはいかばかりか?(タコばかり、すいつくばかりで御座います)ということで、お後がよろしいようで。 実際、その集団でしか、通用しないルールは、ここかしこに存在している。
時太山急死
007年6月26日、同年春に入門した序ノ口力士の時太山俊が稽古中に倒れ、28日に死亡した。
今まで明らかになった事件の概要は、以下の通り。
1)時太山がけいこの厳しさに脱走2)この脱走に憤慨をし、6月25日に時津風親方がビール瓶で頭を殴りさらに数人の力士に「かわいがってやれ」と暴行を指示
3)翌26日も通常は5分程度のぶつかり稽古を30分に渡り強い、倒れた後も蹴りを入れたり金属バットで殴打するなど集団暴行
4)また遺族に無断で遺体を火葬しようとしたことも発覚しており暴行の事実を隠蔽しようとした疑いがもたれている
5)時津風親方は、暴行に金属バットを使ったこと、自分がビール瓶で殴ったことについて弟子に口止めをしている。また、ほぼ連日、弟子を集めて、県警の聴取内容を詳細に報告させ、口裏あわせを指示した。
ビール瓶で頭を5回殴り、更に数人の力士が金属バットも用いて暴行を加えた段階で、既に立派な犯罪でしょう、一般的には。
人が一人死んでいるのに、その事を躊躇なく闇から闇に葬り去ろうとしている一連の行動が4)~5)なのだが、どんなメンタリティなのか。
当初、時津風親方のコメントは、「稽古中の不慮の事故」ということであり、相撲協会にもその旨報告。
9月28日に,文部科学省より、真相の究明、関係者の処分、再発防止策の検討、過去の類似事例の検証、力士の指導に関する検討委員会への外部の有識者の参加の5点について、異例の指示があり、初めて北の湖理事長は、真相究明に重い腰を上げている。死亡してから、この間、約3ヶ月。相撲協会の感覚って、一般常識と大きく乖離していないか。
相撲界には、「かわいがり」という、先輩が後輩力士をしごく習慣があるとのこと。相撲部屋という閉鎖的な社会の中で、いつからか、この所謂intensive trainingと集団リンチの境目が、物凄く曖昧になっていたのでは?
相撲の世界は、完全な実力世界。年齢、国籍も無関係で、例えばプロ野球のように、外国人枠などというルールもなければ、外国人選手が55本のホームラン記録を破ろうとした時に、露骨に四球作戦を実施するようなセコい部分もない。一面、潔い、わかり易い世界。
一皮めくれば、八百長疑惑は解明されず、朝青龍問題はダラダラ続き、そして今回の事件。文部科学省が、わざわざ指示項目に、「過去の類似事例の検証」と入れてあるのは、闇に葬られた同様の事件が、他にもかなりあるのではないかという疑惑と懸念の表明だ。
伝統と権威のある閉鎖的組織に自浄能力を求めるのは、難しい。そこには、一般的常識に照らすと、かなり歪んだ暗黙の了解があり、内部からの改革を阻害する。嘗て、多くの企業が再生に失敗した事例をみても、見識と危機管理に優れたリーダーを外部から招聘することが、必要不可欠のように思える。
どの部屋でも、新弟子の数が減り、強い上昇志向をもった外国人力士に、席捲されている大相撲だが、今回のようなゴタゴタが続くと、この世界に飛び込もうとする有望な若者を失うという結果になる。
新日本プロレスで、長州革命を起こした時、長州力は、「非常ベルが鳴っているのに、誰も聴こうとはしない」という名言を吐いた。相撲協会幹部に、「非常ベル」は聴こえているのか?

